その古酒が、明治期に入り、忽然と姿を消した理由としては、酒税の影響が最も大きなものです。とりわけ明治政府が課した「造石税」は、それで日清、日露の戦費を賜ったといわれるほど過酷なもので、酒造家は酒を造るだけで課税され、酒を熟成して美味しくして販売する余裕がありませんでした。
また、税もかなり高額でしたので、当時の酒飲みの多くは「ひたすら酔う」のが目的で、味よりも量が主眼、割高につく長期熟成酒は自然と消えていってしまいました。日清、日露の戦争が日本酒から「酒の文化」を奪ったといってもよいでしょう。
世界の文化の発達した所には、必ず素晴らしい古酒が存在します。
フランスのワイン、コニャックしかり、スペインのシェリーしかり、ポルトガルのポートワイン、イギリスのスコッチ、中国の招興酒…。それぞれがその国の文化の香りあふれる素晴らしい古酒です。
日本酒に文化を!…麗人酒造が意識的に古酒の蓄積を始めたのは、昭和47年(1972年)でした。いつ発売できるか分からない。はたして美味しくなるのか? 試行錯誤の末、30年の年月が経過しました。ようやく大吟醸の25年古酒、シェリー酵母をつかって熟成した21年の純米古酒、22年ものの酒粕からの焼酎を販売できるようになりました。
また最近の研究で、古酒の方が体内に発生する「活性酸素」の量が少ない(東京農業大学 吉沢潔教授のお話より)といわれており、注目されております。