古酒の蔵

江戸期までは古酒ほど貴重だった

江戸時代の食に関する辞典「本朝食鑑」(1695)は、古酒の造り方に触れた上でこう書いています。
その三、四、五年を経た酒は味が濃く、香りが美しくてもっとも佳なり。六、七年から十年にもなるものは、味は薄く、気は厚め、色は深濃で、異香があって尚佳なり。
といった川柳も見えます。下戸でも、古酒の口当たりのよさについ飲み過ぎてしまう…それほど古酒は旨いというわけです。

さらに溯れば、鎌倉時代の日蓮上人の手紙には
人の血を絞るがごとき古酒
と表現しております。

また、酒の達人・作家の開高健は、この古酒を、こう絶賛しています。
日本のオールド(古酒)は、ホント、いいぞ。日本民族であることに、誇りを覚えたくなる程だ。
江戸時代までは、実際、長く寝かせた酒ほど貴重とされ、熟成年数に応じて値段も高く取引されていました。

なぜ古酒が姿を消したのか

その古酒が、明治期に入り、忽然と姿を消した理由としては、酒税の影響が最も大きなものです。とりわけ明治政府が課した「造石税」は、それで日清、日露の戦費を賜ったといわれるほど過酷なもので、酒造家は酒を造るだけで課税され、酒を熟成して美味しくして販売する余裕がありませんでした。

また、税もかなり高額でしたので、当時の酒飲みの多くは「ひたすら酔う」のが目的で、味よりも量が主眼、割高につく長期熟成酒は自然と消えていってしまいました。日清、日露の戦争が日本酒から「酒の文化」を奪ったといってもよいでしょう。


古酒は体に優しい酒

古酒は飲み方も多様で、「冷や」でもよし、「燗」をつけて飲んでも美味しい。しかも、古酒は身体にも優しい。新酒に比べ、熟成を経た酒はアルコールと水の分子が完全に融合して一体化する。そのため内臓の粘膜への刺激も少なく、かつ体内に吸収されてからの分解速度も速い。多少飲み過ぎても、宿酔しにくいという。
<以上小学館 古酒入門より>

文化の香りあふれるロマンの酒 古酒

世界の文化の発達した所には、必ず素晴らしい古酒が存在します。

フランスのワイン、コニャックしかり、スペインのシェリーしかり、ポルトガルのポートワイン、イギリスのスコッチ、中国の招興酒…。それぞれがその国の文化の香りあふれる素晴らしい古酒です。

麗人の古酒の歴史

日本酒に文化を!…麗人酒造が意識的に古酒の蓄積を始めたのは、昭和47年(1972年)でした。いつ発売できるか分からない。はたして美味しくなるのか? 試行錯誤の末、30年の年月が経過しました。ようやく大吟醸の25年古酒、シェリー酵母をつかって熟成した21年の純米古酒、22年ものの酒粕からの焼酎を販売できるようになりました。

また最近の研究で、古酒の方が体内に発生する「活性酸素」の量が少ない(東京農業大学 吉沢潔教授のお話より)といわれており、注目されております。

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